レポート
2023.09.27

【山口市】カブトガニの住む山口湾

生きている化石と呼ばれる「カブトガニ」。
2億年にわたってその姿を変えていません。
かつては瀬戸内海全域や九州北部の海に生息していましたが、干潟が埋め立てられるなどして、近年生息できる環境が激減しました。
環境省のレッドリストで「絶滅危惧ⅠA類」に指定されています。

山口県内では平生湾や下関市の千鳥ヶ浜、そしてこの山口湾の3カ所だけで産卵と幼生の生息が確認されています。

幼生の生息調査

8月19日(土)にカブトガニの幼生生息調査がありました。
2006年から毎年参加者を募って行われ、今年は中学生以上の約50人が参加しました。

参加者は16mほど間隔を開けた幅2mのライン上を歩きながら、干潟に生息するカブトガニの幼生を探します。
幼生を見つけたら、甲羅の幅を測り、GPSで発見地点を特定して記録していきます。
参加者は泥だらけになりながら、調査を進めていきました。

2時間の調査の結果、カブトガニの幼生は444匹確認されました。
1396匹見つかった2015年以降、幼生の数は減少傾向にあります。

カブトガニの卵

こちらは、砂の中に産み付けられたカブトガニの卵です。
殻の中で回転しているのは赤ちゃんです。

産卵は6月下旬から8月上旬の大潮の満潮時に行われます。
約30日後に卵が透けてきて、中の幼生が回転し始めます。
写真は、ちょうどその様子をとらえたものです。
殻の中でクルクル回る赤ちゃん。
他の生き物ではなかなか見ることのない習性です。

そして、産卵から約50日後に孵化します。
幼生は小さな貝やゴカイなどを食べ、脱皮を繰り返しながら5年ほど干潟で成長していきます。
成体になるまでにはさらに5年ほどかかるそうです。

カブトガニの調査・研究に取り組む原田直宏さんは、「みなさんにこの里海に親しんでいただいて、山口の自然をしっかり感じていただくという狙いでこの催しをやっています。またご参加いただけると非常にありがたいです。」と話していました。

344haの広大な干潟が広がる山口湾。
潮の満ち引きで、姿を現したり水中に隠れたり・・・。
さまざまな生き物の生息地であり、渡り鳥の休息の場所でもあります。
カブトガニの幼生を目にして干潟の持つ役割を改めて考えました。

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